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デリバリー漫画家
災難はどこに潜んで いつ降りかかってくるかわかりません。


「へぇ、原稿明日朝イチ厳守っすかー?
そりゃ大変ですね先生。がんばってください。…で、何すか?」

「そやねん。ほいでな、ワシ原稿持って今日キミんとこ行くねんからな、手伝ぅてもらお思てんねん」

「はっ?…ボクがですか!?ボクがっ??」

「そやそや、キミしかおれへんねん!頼むねん。ほなな!」


私が迂闊でした。夜半ではなく、午前中に掛かってきたT先生からの電話を、怪しんで着信拒否すべきだった!…と、そう気づいても後の祭り。
「あ~今日はちょっとお腹が痛くて熱っぽいし寝込んでるんです」とか「ボクも急ぎでカット描きの仕事があるんです」とか、咄嗟の機転を利かせなかった己の愚行を悔いるばかりです。

しかしこれも浮世の義理、身の因果。こうなりゃ夜食に寿司でも鰻でも食わしてもらおうじゃないの!と腹を括って、御大T先生のアシスタントに臨んだのでありました。



サブ机で先生.jpg
拙宅のセカンド机にて屁をこきながら執筆に励むT先生



T先生とは長年飲食の席でご一緒させて頂き、その溢れんばかりのバイタリティーには感服を超えて今や辟易させられてばかりですが、こうして先生の原稿執筆のお手伝いをするのは初のことであります。


それにしても、私自身の原稿でアシスタントさんに来訪を願ったことなら過去幾度となくあり、また指圧や指圧に似た出張も拙宅に迎えたこともあります。しかし漫画家の先生自らが私の住家にやって来て家主たる私がアシスタントとは、何とも妙な設定です。
と言うのも、T先生は “豊○園のエロゴミ屋敷” と謳われた仕事場を引き払い、現在引越しの後片付け最中だそうなのです。

私はT先生の原稿に消しゴムを掛け、ベタを塗ります。人様のアシスタントは、そう…15年ぶりくらいでありましょうか。


執筆中.jpg


いつもは酒席でT先生にやり込められている従順で何より礼儀を重んじる私ですが、この日ばかりは我が物顔です。
〆切に焦る作家と対照的に、アシスタントは何の責任感もなく暢気なものです。

「先生、そろそろ腹が減って疲れてベタが塗れません。出前取りましょ出前。どうすか?この『特上三人前』ってのは」

「ふっ、フザケおって!…寿司なんざアカンアカン!弁当で勘弁してくれへんか?なっ!ネットでガストのデリバリー検索してみぃや」

「ガストの弁当かー。弁当…ね。なんだぁー。そんならホワイトのスピードもガタ落ちんなるなぁー」

夜の街でスナックのホステス衆引き連れて呑み歩く時は豪放な癖に、意外やシラフの仕事中は質素で慎ましやかな懐の狭い男でした。


ガスト弁当.jpg


原稿18ページ、消しゴムからベタとホワイトまでは私がキッチリ職人の腕を奮い、トーン処理を残して深夜T先生はタクシーで去りました。

翌日昼前に、バイク便で完成原稿を出版社に無事ギリギリで送ったとの、先生からのメール。
少しは私も役に立ったようです。


さて、今回の私の働き、時給5,000円くらいは頂きたい…ところ。本日は別件でT先生とまたお目に掛かり、アシスタントの報酬をくださるそうですが、ここは特別に破格の安価で手を打ちましょう。
今後T先生相手にネチネチと恩着せがましく責めるには、その方が得策というものです。
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