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気まぐれ日記::遥かなる馬鹿の呼び声
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遥かなる馬鹿の呼び声
幾ら何でも、いけません。

食に対してさほど貪欲でもない私は、普段は自家製の糠漬けをお供にお茶漬けで空腹を膨らまして適当に飢えを凌ぎ、安酒で程よく酩酊し粗食で慎ましく穏やかに暮らし、画業に専念する質素な日常であります。

それがどうでしょう。
ひと度呑み友達と繁華街に繰り出してアルコールを呷るや、大抵二軒目の店を出る頃には記憶も定かではなく、夜通し酒に溺れて…、ホステス嬢をハベらせ調子に乗って油っこい料理を食い散らかした果てには、財布内に確かに数枚控えていた天下の万札は見事に消滅しているのですから…。

それも高貴で上品な交遊でしたら、清く意義ある金銭の使いみちとも言えましょう。
しかしながら私の周りの同業畑連中と来たら、飲食の席上で相も変わらずウ○コだチンチンだのパイパイだの…いい歳をして碌でもない不浄な話題ばかり並べ立てたがる悪党揃いなのですから、実に嘆かわしい限りです。


そんな血気盛んな荒くれ者衆との社交行事も偶にならばまだ結構なものを、連夜に渡り遊興街で身の程を顧みずにとんだ散財をしでかしてしまい、あれから私は猛省の念を否めません。

これは当分の間、尚一層の清貧生活を続けて自粛の日々を……
なんて思ってもみましたが、いえいえ…こんな時こそ、秘策の荒療治です。

そう、“馬鹿な散財で悔やんでしまったら、もっと凄い大散財をしちまえ!” の、命懸け,捨て身の自己流治療法です。
無論、子孫繁栄に背を向けた独り身にのみぞ許されし、不惜身命たる禁断の荒技であります。


自らの無謀な金遣いを、またしてもこの場で暴露してしまうのも甚だお恥ずかしいのですが、こんな物を……

バレむい.jpg



あ、ちゃうちゃう!間違い間違い。
そんなんじゃなしにね……

G&L全体.jpg

ジャ~~ン!!
久方ぶりに、新たな趣味の品が我が手元に到着!

「G&L L-2000」ってモデルのエレキベースざんす奥様!
どうだ!?二晩呑み回って叩いた額を大幅に越える価格の高級楽器じゃい!!


楽器愛好者の言わずもがなの鉄則としては、
“楽器は現物を試奏してから購入すべし”。
それは、私如き端くれ者とて百も承知。

ネット社会の現代では、ウン十万円だかの高額な品物を、クリックひとつでポチッと注文…なんて、裕福で豪快な御仁が全国には点在するのでしょうが、幾らネット通販中毒症の私でもそこまで無茶は致しません。
あくまでも玩具レベルのつもりで、高くてもせいぜい “前半” 万円でネット通販やオークションで楽器を入手したことはございます。

で、安価なベースギターは最早私の手元になく、何故かお水方面のご婦人に呆気なく進呈してしまったりと。
まぁそれもまた人生の一興。

しかし今回のこれは、マトモな市民の良識ある感覚では、とても尋常なお値段の代物ではありません。
一般市場に流通していたスペックの品ではなく、ショップ発注の特注品だそうで、その中古楽器。
つまり、一歩世間に出せば蔑まれ買い叩かれる個人オーダーの改造物楽器(私のFenderが典型的)とは別格の、私のツボの “限定品”。

G&Lボディー.jpg

それも、赤いし。ただのレッドじゃなく、シースルーレッドってぇとこがまた憎い。アッシュの木目が綺麗でしょ。スイッチが一杯ついてて、何だかわかんないとこがまた凄い。


ネットで偶々発見し、どぉ~してもその楽器に惚れて所有欲に魘されれば、その店舗まで試奏に足を運ぶ…なんてのは音楽同好仲間からも時折耳にする珍しくはない話。

ところが、確かもう数ヶ月も前からPCモニターで私の目を惹いていたそのベースを販売しているのは、遥かも遥か、北海道の楽器店!
この東京都練馬区から、そんな所に趣味の品を触りに行く程私は酔狂でも風流人でもございません。

ですのでさすがにそんな品はネットでひと目惚れしたところで端から諦め、「早く誰か買えよ!目障りじゃ!買っちまえよ、お金のあり余ってる何処ぞのマニア野郎!」と捻くれて念じておりました。軽く試しに買える程の値段じゃないし。


それなのに、今年に入ってもまだその品は売れません。売れ残ってます。
ネット通販の定番の落とし穴で、『残りあと1個です』なんて表示に踊らされ、鼻息荒く注文確定してみれば、少ししてまた同品のページに『残りあと2個です』の表示!何やそりゃ!?幾つもあったんかい!!

…なんて姑息な目に遭うことも、通販道を極めていらっしゃる紳士淑女には少なからずご経験がおありかと察します。

ですがその北海道の楽器屋さんでは以前にも小物を注文した際に、HPの謳い文句通りに誠実な姿勢を店主から感じておりましたので、決して下世話な悪質店舗ではないでしょう。

…にしてもこの値段!中古で安いっ、つっても、高い!
高いんだから慎重に試奏をしに…、つっても、遠い!
じゃ諦めっから、早く誰か買いやがれ!
…まだ売れない。
まさか此奴この俺をっ…、遥か北海道の地から、東京は練馬の俺を呼んでんのか!?
…にしても、高いっつの!

の堂々巡り。
なんて入魂のエロ漫画を執筆しつつも、こんな悠長なことばっかり考えて生活しておりました。



『ねぇ…まだワタシを買ってくれないの?買ってちょうだいな』

「そーか、そんなにこの俺に所有してもらいてぇか!?よっしゃ、負けたぜ!」

遂に、夜の繁華街で間抜けな散財をしてしまった釈然としない心情から、思い切って禁断の高額品注文に至ったのであります。我が通販史上最高値のお買物!


やはり期待を裏切らぬ優良な店舗で、ほんの数日後には送料無料にて遥々北海道からこの練馬区の拙宅に、ハードケース入りの高級エレキベース様ご到着!

ハードケース…。
そんな立派なギター&ベースを持ったのは、そう言えば私にとっては中学生以来のことであります。
親にねだって買ってもらった初めてのエレキギターのハードケースは、鍵もついていて、エロ本の隠し場所には最適でした。
当時エロ本のことを、同級生の悪友たちと示し合わせて使っていた隠語は「参考書」でありました。

「新しい参考書入ったぜ」
「おっ、じゃ放課後オレの参考書と交換だ!」
「あぁ~、早く帰って勉強してぇ~…」
なんてね。
あの頃…、エロ本は宝石のように輝いてたっけなぁー…。

“親の居ぬ間にセン○リ”
しみじみ名格言です。


そんな話題ではありません。
“さて、アタリか?ハズレか!?”
もし思惑が外れ好みの品でなければ、数万円の損失覚悟ですぐに新宿辺りの楽器店に売却する心づもり。さて!?

幸いにも、数ヶ月も私を悩ませていたその レオ・フェンダーの遺産 G&Lベースの質感は、一切の不安を跳ね飛ばす期待以上の逸品!
飛行機に乗って北海道まで現物試奏に行ったとしても、買って帰ったことでしょう。


G&Lヘッド.jpg
マッチングヘッドでっせ!USA製でっせ旦那!


などと一人前に息巻いている場合でもありません。
確かに身分不相応なまでの、とんだ散財に次ぐ大散財…!
第一ろくすっぽ弾けもしない腕前なのに、性懲りもなくこんな醜態です。


しかし…お蔭で先日の連夜大遊興の傷も癒えました。
今月はおとなしくひっそりと、仕事に精進致します。多分。
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